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その心は、深海のように深い『25時のバカンス』

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その心は、深海のように深い『25時のバカンス』


今日は大好きな漫画のご紹介を。

それは市川春子さん作の『25時のバカンス』です。





この本を見つけたのは、数年前に本屋さんを通りがかった時。

青い色と海が好きな私は、すぐにこのカバー絵に惹かれて購入しました。

発行日は2011年の9月、2年半ほど前です。

『作品集』なので、タイトルでもある『25時のバカンス』と、『パンドラにて』『月の葬式』の計3つの物語が入っています。
今回は『25時のバカンス』の感想です。長いです。

このストーリーは、前編・後編と分かれた作りになっています。 


◆読む前のイメージ
最初は人間ドラマ的な内容かな?と思って手に取りました。
読み始めた時もやはりそんな感じかなと思ったのですが、主人公・乙女の『姿』を見て、これは全くそんな普通の物語ではない、と感じました。
正直、雰囲気漫画のような感じだろうか、とも思ったのですが、科学的説明を含む超展開となり(とは言え非現実、幻想的な物語ですが)、それにより物語の現実感が増しているように思います。



-主人公乙女とは?
主人公・乙女深海生物圏研究所の副室長であり、また、天才科学者でもあるクールな女性。
他人の言動に「なんだそれ 5点」と点数を付けるのが彼女独特の愛情表現(?)。
この「点数制度」が物語を通してのキーでもあります。

-弟・甲太郎とは?
乙女の12歳年下の20歳の弟(つまり乙女は32歳)。
幼い頃に木から転落した際左目を負傷、失明には至らなかったものの血の通り道となってしまい、以来『赤いフィルター』がかかったようになる。

-乙女の秘密
この他乙女の研究室の個性的な研究者達も登場、皆、乙女を慕っており彼女に『良い点をつけてほしい』と思っています。
そんな乙女は深海研究における新種の貝を体内に取り込み、それらに内臓・脳・骨まで食べつくされ『貝殻人間』となってしまいます。
そして体内には3匹の妙なカマボコのような生命体が。
その秘密を知っているのは弟・甲太郎と、総務の八木君の二人
「大変珍しくなってしまったから狙われている」彼女は甲太郎にそう告げます。

-乙女の恋心
 最初は乙女と甲太郎の姉弟関係には何も疑問を抱いていなかったのですが、物語が進むにつれ乙女の気持ちが分かり、今までの言動は甲太郎の気を惹きたかったから、と気付きました。
「他人に見えないか?」との問いに「姉ちゃんにしかみえねぇ」と応える甲太郎を見て「そうか」と呟く寂しげな微笑み、血がない自分は『姉』と言えるのか、と言う呟き。
これらから『姉弟』と言う関係を壊したい、と言う乙女の気持ちが垣間見えます。

-もっと近付きたい
そして姉の身を案じて「見てるからね」と言う甲太郎に、聞こえないように「見てる だけか   くそっ」と海に潜るシーン、前編最後の「もっとちゃんと調べなさい」のシーン。
もっと自分に興味を持って、近付いて欲しい、でもそんな事口が裂けたって言えない。そんなもどかしさが伝わってきます。

-二人の距離
そして甲太郎自身も、彼女を知り尽くしているという例の『生命体』の言葉から、姉は何故自分にそばに居て欲しいと思っているのか?と考え始めます。
珍しいからでもない、便利だからでもない、・・・じゃあ、と ふと乙女の顔を見て、何となく気付く甲太郎。
そこから二人の関係が少しずつ変化していきます。

-誕生日プレゼント
そして物語の最後に贈られる乙女から甲太郎への『誕生日プレゼント』。
乙女ははっきりとは言いませんが、この為に『貝殻人間』になったのです。
そしてそれだけでなく、体内で飼育していた『生命体』を海底に放った事で、解体されるはずだった研究所も元の忙しさを取り戻します。
どこまで計算していたのかは分かりませんが、まさに身を犠牲にしたと言う結果になった乙女。
しかしその代償として得たものは、最も彼女の望む物だったのではと思います。


-3匹の生命体
さて物語に出てくる、乙女の体内に巣食う3匹のカマボコ生命体たち。
名前はありませんが、とってもキュートな生命体です。
最初は乙女の体内からにょきっと出てくるだけでしたが、彼女の身体から離れ少しずつ甲太郎との親睦も深めていきます。
彼ら(?)は乙女の脳・内臓・骨までをも食べつくしたため彼女の事なら過去から現在に至る全てを知り尽くしています
そしてもちろん、甲太郎に対する気持ちも。
キュートな外見とは裏腹に、彼らの思考はディープ。深海だけに!
そんな彼らが海底に帰る時に乙女に告げる別れの言葉が私は大好きです。

-乙女の心を代弁をする生命体
2番目に帰ったイソギンチャク型生命体の
「孤独は苦い贅沢品。特に姫のは上等の。一日も早く若のミルクを混ぜてもらえるように。」
これは乙女の甲太郎に対する気持ちを察しての言葉なのだろうな、と思います。

そして3番目のハート型生命体の
「長いお別れが姫の幸せ。」
 ここだけ読んでも意味が分かりませんが、その後に乙女が一度海底に沈んだ時
「若が姫の珍しさに飽きたら海底にさらってくれとおっしゃっていましたが」
と言うカマボコ生命体の言葉からその意味が分かります。
長い別れ=甲太郎が乙女に対して興味を持っている と言う事だったのですね。

そしてその後の言葉、これが一番胸に響きました。
「これ以上近づけないのなら遠のく日が恐ろしい。このまま最高得点で時を止めて逃げてしまおうと言う算段ですね。」

最高得点と言うと独特な表現ですが、相手が自分との今以上の関係を望んでいない、これ以上一緒にいても辛いだけ。
それならばこの最高の状態で、終わらせたい。

誰しも人を好きになった時に、経験のある感情なのではないでしょうか。

乙女はどう言うつもりで海底に沈んだのか、偶然だったのか。
『海底生命体』たちの「溺れてる」と言うウソで海上の甲太郎の元に行きますが、最後の『プレゼント』を考えると元から戻る気ではあったのだろうと思います。




◆最後に
さてさてすっかりと長くなってしまい、語る場所が多すぎる為上手くまとめられず申し訳ないです。
二人が中々近づけないのは『禁断の恋』故なのですが、それだけでは語り尽くせない感情が、まさに波のように押し寄せてきます。
この後二人がどうなったのか、想像では歩けなくなった乙女の傍に甲太郎がいる、と言う図を想像してしまいますが乙女はそんなにか弱い女性でも無い様に思います。


しかし最後の
「おまえは 私を 粉々にしてもいいんだ」
と言う台詞は、最高級の愛の告白だと私は思いました。


後日『パンドラにて』、『月の葬式』の感想も書きたいと思います。





※文章中の台詞は所々省略しております。


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